校長日誌 全校集会・部活動報告会・壮行会
令和6年7月19日(金)全校集会を行いました。昨日梅雨明けとなり、蒸し暑いためオンラインで実施しました。校長講話の後、進路指導部長から今後の大学入試は文理融合型となってくるだろうから、入試科目ではないという理由で科目を絞っていくのは時代遅れだなどの話をしました。次に生徒指導部長から、自転車乗車時に係るマナー遵守と道交法改正、ヘルメットの着用などについて及び歩きスマホの危険性、SNSを利用する際の留意点などについて話をしました。
全校集会終了後は、先日の北関東大会に棒高跳びで出場した陸上競技部の報告会とこの夏に全国大会に出場する書道部、放送部、SSGの壮行会が行われました。既に大会が終了した陸上競技部は、パーソナルベスト更新おめでとうございました。この後大会を控える書道部、放送部、SSGの皆さんは学校代表として精一杯力を発揮してきてください。
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校長講話要旨
皆さん、おはようございます。今日は、私が高校の時の経験を少しお話しします。
高校3年生の時、転勤してきた歴史の先生の授業は大変分かりやすい授業で、受験勉強には大変役立つ授業でした。もちろん、人気もありましたが、一方で批判にもさらされたのです。僕たちは高校の授業を受けに来ている。予備校に来ているわけではない。もっと、アカデミックな授業をしてほしいと。
時代ですかね。今では考えられないことかもしれません。その先生も心外であったでしょう。せっかく分かりやすい授業を心がけているのに。
この歴史の先生のことを思い出したのは、先日、神戸にある須磨寺の副住職小池陽人(こいけ ようにん)さんがある専門紙に書いた随筆が目にとまったからです。
小池さんの文章を要約すると、こうです。自分は説法をするときに「相手に伝わらなければ意味がない」と思っていた。
ところが、あるテレビ番組で有働由美子さんとタモリさんが対談しており、有働さんが「万人に分かりやすい番組をやろうと考えてやってきた」と発言したのに対し、タモリさんは「過度に分かりやすくしようとするのは、テレビを観ている人を馬鹿にしているのではないか」「分からないところは分からなくて良い。自分はそうしてきた」と答えた。小池副住職はこの言葉に衝撃を受けた、と書いています。
小池副住職はこう続けます。「わかりやすさを求めるばかりに、本当に伝えたいこと、やりたいことがずれてしまうことがあるのではないか」「分かりやすさよりも分かり難さが印象に残ることもある」「謎を抱えたときに、人は想像し、考える」と。
私は「分かりやすさ」にはいくつか種類があると思っています。例えば、論理的に段階を踏んで伝える分かりやすさとか、謎の部分を巧妙に隠して内容を単純化する分かりやすさなどです。
だから、分かりやすさの中には多分に危うさをはらんだものがあると思うのです。
例えば、ネット記事は分かりやすく書かれているものが多いと感じるかもしれませんが、それはもともとあなたに合うようにカスタマイズされています。レコメンド、エコーチェンバー、フィルターバブルなどの言葉を耳にしたこともあるでしょう。分かりやすいからと鵜呑みにしてしまうと、思考の偏りや誤った知識を身につけてしまう恐れがあり、極めて危険です。
また、現代のような混沌とした世の中で、分かりやすいものからだけ受動的態度で学んだ知識、技術、智惠は、世を渡っていくのにどれだけの力になるでしょうか。
先ほどの小池副住職は文章の中でこうまとめます。「答えを求めるその道中に、思わぬ学びを得ることも沢山ある」「聞いた方の心に豊かな謎を残すような法話ができるように精進したい」と。
ちなみに、冒頭で話をした歴史の先生については、分かりやすい授業をするだけでなく、実は多くの研究成果を著作に残しており、授業の端々にそうした研究成果に基づいた次の学びにつながる深さがあったと語る卒業生も多くいました。豊かな謎を聞き取るスキルも大事ですね。
さて、川女の先生方は分かりやすい授業を心がけていますが、その中に多くの「豊かな謎」があるはずです。皆さんはその豊かな謎を見つけ出し、それについてじっくり考え、解き明かしていくことで、学習の効果を高めてほしいと思っています。これから始まる夏季補講ももちろん同様です。良い成果が出ることを期待しています。
では、夏休み中は勉強の他にも、部活や文化祭準備などやることは沢山あると思いますが、体調には十分留意して、また、事故に遭わないよう過ごしてください。夏休み明けにお互い元気な姿で再開できることを楽しみにしています。
参考文献:令和5年3月31日 中外日報「随想随筆」